一言で言うと、「水引は装飾品、元結は実用品」です。
どちらも日本の伝統的な結びに使われる紙紐ですが、用途や意味合いには違いがあります。
水引は、ご祝儀袋や贈答品の包装などに用いられる飾り紐で、色や結び方によって意味が異なります。
元結は、主に日本髪の根元を縛るための紐で、歌舞伎や花柳界、大相撲力士の髷、時代劇のカツラなどに使われています。
元結の方がより丈夫な材料を用いることが多く、製法には共通点もありますが、目的や役割には静かな違いがあります。
飯田では、江戸時代・堀美作守親正の時代に、産業奨励によって製紙や元結業が盛んになりました。
中でも「文七元結」は広く知られ、人気を博しました。
明治期の断髪令により元結の需要は減少しましたが、そこで培われた技術は水引の生産へと応用され、地域の産業として新たな道を拓きました。
現在では、飯田の水引は全国シェアの大部分を占めるまでに成長しています。
元結堂南田は、元結に込められた文化と技術を受け継ぎながら、今もなお、未来へと結びをつなぐ営みを静かに重ねています。