ひさかた和紙の作り方
下久堅では楮(こうぞ)を主原料としています。元結堂南田では、自家製の楮とトロロアオイを使用して冬季に紙を製作しています。
原料の準備
楮の栽培と白皮までの加工
- 楮の栽培
- 春から秋にかけて専用の畑にて楮を育てます
- 楮の枝が成長する際、葉の付け根から新芽が出てくるのでこまめに摘み取ります(芽カキ)
- 楮の収穫
- 秋に楮の葉が落ちた後、楮を鎌や太枝切鋏で刈り取ります
- 蒸し釜のサイズに合うよう、長さをそろえて切り、束ねます
- 楮皮剥ぎ
- 収穫した楮の束を釜に入れ、桶などの覆いをかぶせて蒸し上げます
- 蒸しあがったら、熱いうちに束の上から冷水をかけて皮を剥がれやすくします
- 釜から楮の束を取り出し、楮の皮が一枚の長い短冊状になるよう剥がします
- 楮干し
- 一握り程度の束にして、楮の皮を干します
- カビやすいので、風通しの良い場所で注意して干します
- 楮たくり(表皮削り)
- 干した皮を水に浸けて、柔らかく戻します
- 楮の皮は黒皮・緑色の甘皮・白皮からできているので、刃物を使って黒川と甘皮を削り取り、白皮のみにします
- 楮干し
- 一握り程度の束にして、白皮を干します
- 白皮まで加工すると、長期の保存が可能となります
トロロアオイの栽培と保存
- トロロアオイの栽培
- 春から秋にかけて専用の畑にてトロロアオイを育てます
- 連作を嫌うので毎年育てる範囲を変えます
- トロロアオイの摘心
- トロロアオイの根を使うため、花芽を摘み取ります
- 種を取る場合はいくつか花を咲かせます
- トロロアオイの収穫
- 秋にトロロアオイを掘り出し、根を洗います
- トロロアオイ干し
- 収穫したトロロアオイの茎と根を切り離し、根を紐でくくり日陰に干します
紙料つくり
- 煮熟(しゃじゅく)
- 白皮をアルカリ溶液で煮て、不純物を溶かします
- 煮る具合によって紙の質が変わってきます
- 楮晒し
- 井戸水をかけ流してアルカリ分を抜き去ります
- 晒しの具合によりも紙の質が変わってきます
- 塵取り
- 煮た白皮からゴミを手作業を取り除きます
- 叩解(こうかい)
- 塵取りを終えた白皮を叩き板の上に乗せ、ベイと呼ばれる棒で叩きます
- 水の中で繊維が散るまで叩きます
- 叩き具合によって楮の繊維束の入り具合が変わってきます
- とろろつき
- トロロアオイの根を叩き、粘液を取り出します
- トロロアオイの根の粘液は
- 楮の繊維がの中で粘剤は繊維をよく浮遊させ、また紙料液の滴り落ちる速度を抑えて簀を動かすゆとりを生むことで、繊維をよく絡ませ、厚さの均等な薄い紙を漉くのに役立つ
紙漉き
- 紙料の調合
- 漉きフネに水を満たして、紙料を入れます
- 竹のタテ棒とマンガ(馬鍬)を使用してよく混ぜます
- トロロアオイの粘液を入れてさらにかき混ぜ、紙料の濃度を一定にします
- トロロアオイの粘液は、漉きフネの水にトロミを加えることにより、楮の繊維が均一に浮遊するようになります。また、紙料液が滴り落ちる速度をゆっくりとさせることで、漉き簀を長く動かすことが可能となり、楮の繊維がよく絡まり、厚さが均等で薄い紙を漉くことが可能となります。
- 紙漉き
- 岐阜県美濃地方の漉き方を源流とした流し漉きで紙を漉き上げます
- 簀を張ったコテで紙料液をすくい上げ、揺り動かして紙料の膜を作ります
- 横揺りと縦揺りを交互に繰り返し紙の厚さを作っていきます
- 漉き上げた湿紙は、紙床板(しといた)の上に重ねて積み上げます
乾燥
- 紙押し(脱水)
- 紙床板に積み上げた湿紙を一晩、自然落水させた後、ジャッキで圧搾します
- 乾燥
- 脱水した紙を刷毛で干し板に貼り、天日乾燥します
- 専用の乾燥機を使用して乾燥する場合もあります
以上が、ひさかた和紙の基本的な作り方です。
元結原紙「晒紙(さらしがみ)」の作り方
元結の隆盛を支えた晒紙の製造方法を知る人はいません。文献によると、入念な塵取り、入念な叩解、叩解後のさらなる塵取りと、清水への晒しが必要なようです。漉き方にも独特な工夫があったようです。
今後、元結堂南田では、晒紙の製造方法の復活に向けて取り組んでまいります。